線維筋痛症
線維筋痛症とは
診察所見ならびに一般的な臨床検査(血液や尿検査、脳波、心電図、X線検査やCT、MR画像など)に異常がなく、全身または一部分に慢性的で持続的なはっきりとした強い痛みが起こります。
個人差はありますが、軽度なものから耐えがたい痛みを伴うものまであります。
厚生労働省の線維筋痛症に関する調査によると、我が国の人口の約1.7%にみられ、約200万人の患者数とされており、男性に比べ女性に多い疾患です。(男女比1対5)
年齢とともに増加し、55~65歳代にもっとも多い傾向があります。
この約200万人という数字は、関節リウマチの患者数70万人より頻度の高い病気であることを示しています。
具体的な症状は?
この病気の主な症状は、服がすれるような弱い刺激でも起こる激しい慢性的な痛みと「こわばり」です。
ちょっとした刺激でも激痛があるため、食事、入浴、着替え、寝返り、歩行などが困難になります。
日により変動し、温度や湿度、時間帯によっても症状は変化します(特に朝は症状が強くなる傾向があります)
その他にも強い疲労感や頭痛、落ち込んだ(抑うつ)気分、不安感や不眠、口や眼の渇き、下痢や便秘など多彩な自覚症状を伴います。
慢性疲労症候群
強い疲労感を感じる疾患ですが、両者は相互に合併しやすく、日本では線維筋痛症の約3分の1に慢性疲労症候群の合併があるといわれています。
遺伝はあるのか?
一親等の52%(女性71%、男性35%)に線維筋痛症類似の症状が出現するといわれていますが、明らかな直接的な遺伝的関係はないとされ、むしろ環境的な要因が重要であるとされています。
診断
(1)体の広範な部位の原因不明の激しい痛みが3カ月以上持続ないし再発性にみられる。
(2)身体の部位18ヶ所(下記の画像)のうち11ヶ所以上に圧痛(4kgで圧迫)がある。
①後頭部 後頭下筋付着部
②下位頸部 C5~C7横突起間の前面
③僧帽筋 上縁の中央点
④棘上筋 肩甲棘の内側縁の上縁
⑤第2肋骨 第2肋軟骨接合部
⑥肘外側上顆 上顆から2cm遠位側
⑦臀筋 臀部の上位外側1/4部
⑧大転子 大転子隆起の後部
⑨膝 関節境界線から近位側の内側脂肪体
以上この2点が認められれば、線維筋痛症と診断されます。
原因は?
はっきりとした原因はまだわかっていません。
可能性としては、痛みを伝える神経が異常に活動し、わずかな刺激でも痛みと認識し、またその痛みを増幅させることで、神経が過敏になっている状態と言われています。
外科手術、けが、事故、出産、など強い身体的・精神的ストレスなどが発病のきっかけとなることがあり、また日常生活の大きな出来事が病気の経過に影響を与えることがあります。
西洋医学での治療法は?
原因が不明なため、特効薬はありません。
対処療法として非ステロイド性消炎鎮痛薬、抗不安薬、抗うつ薬などを用いています。
薬以外では、精神療法や有酸素運動(エアロビック運動)、ヨガ、マッサージなどですが、これらもはっきりとした効果は不明です。
鍼灸での治療法は?
この病気は原因が不明なため、今の西洋医学での改善は難しい状態にあると考えています。
鍼灸治療は「病名」よりも、「症状」に対して治療をする為、線維筋痛症だからと言って、治療できないという事はありません。
また鍼治療によって線維筋痛症の症状を低下させたとうい研究データもあります。(コクラン)
(Deare JC,cochrane Databese Syst Rev 2013)
鍼灸では症状の出ている所には鍼をせず、別の痛みがないところからアプローチすることが出来る為、痛みに敏感になっている方でも、安心して治療を受けて頂けます。
治療内容としては、背骨周囲の緊張を緩めることで、身体全体の緊張をほぐし、痛みに敏感になっている状態から改善することを目的に行います。
治療回数は約10回ほど必要になります。(治療効果と回数には個人差があります)