機能性ディスペプシア(FD)、胃の不調の症例
症例8 胃腸が弱く、一年前から思うように食べられない
患者
女性 鍼灸経験あり
症状
- 胃のむかつき・もたれ・痛み
- 胸やけ
- 消化不良
- 逆流する感覚
- 胃が重たい(なにか入っているような)
- 食べると気持ち悪い
- 症状は以前からあったが、一年ほど前から悪化した
- 病院で胃カメラ等、検査を受け軽い胃炎があると診断を受けた
- タケキャブ使用中
- 普段の食事は、パン・おにぎり・ヨーグルトを少量食べている
施術内容と経過
初診時
みぞおち不快感を感じる部分に硬さ、圧痛があり、背部にも緊張が見られました。
みぞおちの調整と、背部の調整を行いました。
2回目
胸やけの改善があり、いつも感じていた胃の不快感が軽減。
食後の気持ち悪さも軽減。胃酸が上がる感じはまだあるが、食事量も増えているとのことで、初回同様調整の施術を行いました。
3回目~5回目
安定してきているが、胃酸が上がるのが2~3日に一回食後に出る。
一人前の食事量が食べれるようになった。
胸やけはなくなり、食欲も出てきた、体重が2キロ増えたとご報告いただきました。
6回目~11回目
コーヒーを3杯ほど飲む日があり、その後吐き気が出た。他はそうでもなかった。
施術回数も後半になると胃の調子が安定して、胃のもやもやもなく、胸やけもしなくなった為、治療を終了しました。
通院回数、通院間隔
全部で11回、間隔は7日から10日に一回
使用した主なツボ
足三里LR、上脘、温溜LR、T5(e)LR、T6(e)LR、T7(e)LR
考察
以前から胃腸が弱く、胃腸科に通院していたものの、思うような改善がみられず、だましだまし生活してきたとのこと。
今回症状が悪化し、鍼灸治療を受けたいと思いご予約いただいた患者様でした。
症例7 半年続く胃の張り、食欲不振、食後すぐの膨満感
患者
20代 女性 鍼灸経験なし
症状
- 半年前からの胃の張り感、胃の不快感、食事量の低下
- 消化器内科にて胃カメラをして異常がなく機能性ディスペプシアと診断を受けた
- 食事をしてもすぐお腹がいっぱいになり食べられない
- 食後は胃に物が残っている感覚が強い
- 胃・みぞおちの張りは食後特に強い
施術内容と経過
初回
みぞおち全体に反応があり、特に中央に強い反応がありました。
胃の動きを促すと考えられる手足のツボに鍼をして初回の施術を終えました。
2回目
前回後すぐが体調よく、日にち経つと張りが出てきた。それでも施術前の張りより少ない。
3回目
食後に胃にたまる感じも軽減
張りはまだある。
4回目から8回目
スッキリまではいかないが、体調いい。日によって張りでることもある。空腹感感じるようになった。
9回目から12回目
油物を控えるようにしていれば、胃の不調はそこまで出なくなった。
しっかりお腹もすく。
ご自身で食事の内容を気にして対応できそうな状態になったとのことで、施術を終了した。
通院回数、通院間隔
7回目までは1週間以内で調整、体調改善してからは3~4週間に一度
使用した主なツボ
足三里LR、四とくLR、曲泉LR、条口LR
考察
日常的なストレスや、不規則な生活などで胃の動きが弱くなってしまうことがあります。
胃の動きが弱くなると、すぐにお腹がいっぱいになったり、胸やけを感じたり、食欲が出ないなどの症状を感じるようになることも。
鍼灸のツボで胃の動きを促す研究報告は多数あります。
また、今まで薬だけだと効果がでなかった場合でも、鍼灸と併用することで効果を感じるようになる場合もありますので、症状でお困りの際はご相談ください。
症例6 検査で異常なし、救急要請するほど強い痛みが続く機能性ディスペプシア
患者
男性 50代 札幌市在住 鍼灸経験あり
来院
2022年12月
症状
8年前から逆流性食道炎を患っていて、年に一度、胃カメラを受けていた。
12月に入り、大腸カメラを受け、その翌日からみぞおちの痛みを発症。
痛みが強いため救急車で病院に行き、血液検査、CT検査などを受けたが原因不明。
痛みは毎日朝、昼、夜、深夜にでる。
現在、痛み止めでカロナールを服用中
施術内容と経過
初診時
痛みを感じるみぞおちに緊張を確認。関連する手足のツボに鍼をし、背部にも鍼をした。
腹部の変化が確認できたため、初回の施術を終えた。
2回目
前回当日は夕方弱い痛み、深夜も少し痛みがあった。翌日朝痛みで起きた。
それでも痛みが軽減していて施術の効果を感じる。
3回目
前回当日、夜に痛みが出たが、痛み止めを使わなくてもいい程度。
その後は痛み出ていない。
みぞおちがもやっとすることがある。
4回目
痛みなし、不快感もないため、施術を終了した。
通院回数、通院間隔
施術回数4回。一回目の翌日に二回目を連日続けて行い、その後は一週間おきに施術
使用した主なツボ
上脘、中脘、合谷LR、四とくLR、T8.9.10.11(e)LR
考察
年末は疲労や忙しさなどから胃の不調、自律神経の不調を訴える方が多くなるように思います。
みぞおちと背中は表裏の関係がある為、互いに影響されやすいと考えています。
また臨床上、自律神経の不調がある場合、背中の張りが増している印象があります。
普段から胃の調子がすぐれない方が背部の張りや痛みを感じた場合は注意が必要です。
強い症状が出る前に鍼灸でケアをすることで、未病(症状が出る手前の予備軍)を防ぐことができるのではないかと考えています。
症例5 食べ始めるとすぐに感じる胃の膨満感、胃もたれ
患者
男性 40代 札幌市在住 鍼灸経験なし
来院
2022年6月
症状
昨年夏から定期的に胃もたれ、食べてすぐの膨満感の症状があり、機能性ディスペプシアと診断を受けた。
機能性ディスペプシア治療薬アコファイド、精神安定剤ロフラゼプ酸エチル錠を使用し症状は落ち着いていたが2週間ほど前に精神安定剤をパロキセチン錠に変えてから一気に胃の症状が悪くなった。現在パロキセチン錠は使用していない。
腹部をマッサージすると何となく緩和する感覚がある。
施術内容と経過
初診時
みぞおち上部、右側、下腹部右側に強い緊張、背部にも緊張が見られたため、関連するツボに鍼をし再度確認したところ、背部と腹部の緊張が緩和がみられました。
2回目
3~4日よかった。その後また症状が出てしまった。胃のつまり感。
再度、関連するツボに鍼をしました。
3回目
もともと腸の調子が良くなかった(便秘、下痢)が、よくなった。
胃も改善されてきている。
4回目~6回目
だいぶ安定した。
日常生活上問題ないところまで改善したため、ご本人と相談し、胃の不快感が出てきた場合はご連絡いただくようにお伝えし、施術を終了しました。
通院回数、通院間隔
6回、一週間に一度
使用した主なツボ
T9.11.(e)LR、四とくLR、中脘
考察
背部と腹部の緊張をゆるめ、胃腸のツボに刺激するとすぐに変化がみられることがありますが、デスクワークなど体が固まりやすい生活環境では再発しやすい傾向があります。
日頃、体を動かすようにすることで、不良姿勢や、自律神経のバランスを保ち、安定した状態維持を心掛けるようにしましょう。
症例4 胃カメラ後からの胃の不快感
患者
男性 札幌市在住 鍼灸経験あり
来院
2020年12月
症状
過去に胃炎、逆流性食道炎を患っていたため、毎年胃の検査をしている。
今月胃の検査を行った後から胃の不快感がとれなくなった。
検査後からの不調は
- 胃をつかまれるような不快感
- 食後は数時間気持さが続く
- 固形物をとると悪化するため、おかゆ、ゼリー、バナナなどを食べている
ホームページを見てご連絡いただきました。
施術内容と経過
初診時
みぞおちエリアが強く張っていました。みぞおちを緩めるよう手足のツボや背中のツボに鍼をして施術を終えました。
2回目
だいぶ良くなったとご報告いただき、現在は食べ過ぎると不快感が出る状態とのことでした。
初回と同じツボを使い、施術を行いました。
3回目
胃の症状は落ち着いたため、胃の施術は終え、腰痛や肩こりをメインに施術することになりました。
通院回数、通院間隔
二週間で3回(その後、ほかの症状で通院)
同時に施術を行った症状
肩こり、腰痛
使用した主なツボ
手三里LR、四とくLR、T5T6(4)R、ちくひんLR
考察
今回の患者さんは、はっきりとしたみぞおちの硬さがありました。
胃の不調が全くない場合は、手でみぞおちを圧迫されても特に感じない場合が多いですが、不調があるとみぞおちの圧迫は不快に感じます。ですので、みぞおちが固くなり常に周囲の圧が高まっている状態は慢性的な胃の不快感に直結すると考えてます。
今回のケースでもみぞおちの硬さを調整することで、早期改善につながったと考えられるケースでした。
症例3 胸やけ、胸の痛み、みぞおちの不快感、原因不明の胃炎・逆流性食道炎
患者
女性 40代 札幌市在住 鍼灸経験なし
来院
2019年8月~10月
症状
2019年2月頃から喉に酸っぱい感じが上がってきたり、胸やけするようになってきた。
その後、前かがみになると胸がズキズキするようになってきた為、消化器内科にて胃カメラ検査を受けた。胃と食道に炎症があるといわれ胃炎と逆流性食道炎の薬を処方してもらい使用していたが良くならなかった。
耳鼻科にも行き、鼻からカメラを入れたがやはり原因はわからなかった。
食事なども気を付け、お酢など酸が強い物や、生の玉ねぎなどをとらないようしていたが変わらない。のどが詰まったような感覚もある。
鍼灸治療も受けてみたいとインターネットで腹部症状の治療をしている鍼灸院を探し、ご連絡いただいた。
施術内容と経過
初診時
みぞおちの上部を押すと強い不快感を感じるエリアを確認した。そのエリアを緩める作用のあるふくらはぎのツボに鍼をした。また、下腹部を押すとみぞおちに不快感を感じるエリアもあった為、それと関連する足首のツボに鍼をした。
圧迫した際の不快感が改善したため初回の施術を終えた。
2回目~5回目
喉がひりひりする感覚は改善された。みぞおちの不快感はある。
6回目から10回目
みぞおちの不快感も改善され、前かがみ動作で感じる胸の痛みも少なくなった。
11回目
のど・みぞおちの辛さはない。胸の痛みもほとんどなくなったため施術を終了した。
同時に施術を行った症状
頭痛
使用した主なツボ
築賓LR、三陰交LR、曲泉R、
考察
みぞおちの緊張を調整して改善した症例。
みぞおちをかるく押しただけで強い不快感は感じる場合、おそらくみぞおちは緊張している。
薬で改善しない場合、どうすればいいか改善に悩む症状だが、みぞおちの緊張を調整することが出来れば改善する可能性がある。
症例2 機能性ディスペプシア
食あたりを起こしてから治らない「胸やけ」「吐き気」「のどの詰まった感じ」
患者
男性 30代 札幌市在住 鍼灸経験なし
来院
2019年 5月
症状
2019年1月にケーキや、フライドチキンを食べた後、「胸やけ」、「吐き気」を感じた。
消化器内科にて胃カメラ検査を行ったが異常はみられず「機能性ディスペプシア」と診断された。
その症状はその後も続き、「胸やけ」、「吐き気」以外にも、「のどの詰まる感じ」、「口の中がすっぱい」、などの症状も出るようになった。
症状は日により変動し、特に胃がもたれそうなものを食べたときは必ず調子が悪くなり、気持ち悪さで夜寝られない状態になる。食事に気を付けている日でも夜になると症状が強くなる傾向がある。
Twitterで機能性ディスペプシアに鍼灸が効くことを知り、当院にご連絡いただいた。
施術内容と経過
初診時
腹部の触診を行うと、緊張が強く、圧すと不快感が強いエリアが確認できた。
そこに対応するふくらはぎのツボに鍼をした。
次に吐き気に関係する背中の緊張も確認できたため、そこに対応する膝のツボに鍼をした。さらに喉の調整も行い初回の施術を終了した。
2回目
前回後、二日間ほど大きな変化はみられなかったが、三日目から調子がよく、二回目来院時まで胸やけ吐き気がほとんどなかった。
喉の詰まり感も少ない。
初回同様に施術を行った。
3回目
症状感じずに生活できている。しいて言えば喉の詰まり感が少し残っている。
喉の詰まりを中心に施術を行い、症状も安定していたため、施術を終了した。
同時に施術を行った症状
なし
使用した主なツボ
築賓LR、曲泉LR、元瑠L
考察
一度体調を崩したことがきっかけとなり発症したと考えられるFD。
ウイルス性の胃腸炎や、風邪などで嘔吐したり、胃の不快感を感じると体は不調な部位を守るため緊張を作る。
その緊張は胃腸炎などが完治した後も、緊張を残すことがある。
本症例は、食あたり後も周囲の緊張が解けず、その緊張から不快感が継続したものと考えられる。
症例1 のどの詰まりと胸やけ、胃痛がつらい機能性ディスペプシア(FD)
患者
女性 札幌市在住 鍼灸経験なし
来院
2019年3月
症状
胸やけ、胃痛、のどの詰まり感、吐き気がある。
2018年5月に消化器内科を受診、胃カメラなど検査を行ったが異常なし、胃酸が多いといわれるも原因不明、機能性ディスペプシア(FD)の診断を受けた。
薬(ネキシウム、ガスモチン)を処方してもらい使用したが、効果を感じられなかった。
2019年1月に胃腸炎になり、その後、胃の症状が以前より強くなった。
症状がだんだん強くなっていることから、インターネットで治療法を調べ、当院が胃腸症状を治療していることを知り、ご連絡いただいた。
施術内容と経過
初診時
腹部の状態を確認すると、みぞおちの部分に硬さがあり、軽く押すだけでも不快感があった。その緊張を調整するため、関係する前腕のツボとふくらはぎのツボに鍼をした。
再度触診で確認し、みぞおちの不快感が減っていたため、初回の施術を終了した。
2~4回目
初回後、喉のつまり感が減り、胃の症状も半分ほどになったため、みぞおちの緊張を調整する施術を繰り返した。
4回目には不快感が気にならなくなり、揚げ物を食べても大丈夫な状態になった。
5~6回目
症状が安定しているため、施術間隔を5回目には1週間後、6回目には2週間後と伸ばしたが悪化することなく安定していたため、施術を終了した。
その後、ご本人のご希望により、月に一度メンテナンス目的の施術をおこなっている。
同時に施術を行った症状
肩こり
使用した主なツボ
四とくLR、築賓LR、開魄R、三陰交LR
考察
喉の詰まり感や、胃のあたりの不快感は周囲の筋肉が緊張することで圧迫され感じている場合がある。この場合、胃腸を整える薬を使っても、周囲の緊張を調整しなければ効果は少ないと考えられる。
不快感があるところを触り、もし緊張が強ければ、その緊張がゆるむことで症状が改善する可能性が高い。